言語

ときどき「○○語が世界で一番美しい」という言い方に出会いますが、とても違和感があります。

日本人にとって、日本語はあまり美しいと感じる言語ではないようですが、大学院の中国語音韻論の先生(中国人)は、「私は日本語をとても美しいと感じる」と言っておられました。先生によると、その美しさは説明がつきます。言語音声は子音(噪音)と母音(楽音)でできていますが、子音にはいわゆる「響き」がないのに対し、母音には「響き」があります。日本語は開音節でできていて、必ず母音で終わる、つまりどの音節にも響きがある。さらに、日本語の子音の噪音は激しいものが少なく、耳障りではない。「だから、私が日本語を美しいと感じるのは当然なのです」と。

でも先生は「日本語が一番美しい」とは言われませんでした。「どの言語を美しいと思うかは人それぞれです」。私が「抑揚が比較的平板な日本語を話す私にとって、四声の抑揚は美しいと感じます」と言うと、にっこり笑われたのを忘れません。

それから、日本人は「日本語は難しい」というのが大好きだなと感じますが、どんな言語も、その言語が使われている環境(国とか、民族とか、地域とか)で過不足なく意思の疎通ができるという意味でまったく平等なはず。尊敬する言語学者の千野栄一先生の講義を受けた時、先生がおっしゃった「どの言語でも、その言語で政治ができ、ロケットを作れている」という言葉が端的に言い表していると思います。

「○○語が一番好き」と言うのはいいですが、客観的指標で判定したみたいに言語を「一番美しい」「一番難しい」というのはイヤですね。

……少し気持ちに余裕があるのか、忙しい現実から逃れたいからなのか、以前勉強した言語についてふと思い出しました。久しぶりに千野先生の本を読んでみようかなあ。

外国語上達法 (岩波新書 黄版 329)



この本、タイトルを見るとマニュアル本みたいですね(笑)。でも私の中では、本当にわかりやすい言語学の入門書です。

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