小さな彼のドラマ

どうやら武術の大会でもあるらしく、班の中の上手な子が最後に別メニューで練習している。昨日はその別メニューに私とH1くんがまざった。

かなりきついメニュー1)武術関係者のために。半套4つですだったんだけど、大会前の真剣な練習をしている子どもたち(小学校高学年から中学生くらい)の前で手は抜けない。彼らの練習の効果も出ないし、私の気持ちとしても特別扱いの楽な練習を目の前でするのは彼らがかわいそうだ。ということで、もう11年ぶりに目を三角にしてがんばりました、はい。

選ばれた子は5人、その中の1人はとても上手なんだけど、練習のときに先生の目が離れていると手を抜く傾向がある。自分がうまくできることは一生懸命やり、できないことは流してやる。体の素質がよくて器用で、言われたらすぐできる子に限ってこういう子が多く、下手するとたいした素質はないけどコツコツ努力する子に最後は抜かれたりする。

その子がある動作2)前掃腿360度からそのままジャンプして360度転身して単蝶歩で着地するで失敗して手をついてしまった。確かにやりにくい動作ではあるけど、彼ならできるはずの動作だ。事実、ほかの子はちゃんとこなしている。先生はなんだそれ、みっともない、ほかの子はちゃんとできてるのに、と言ってやり直しをさせたが、また失敗した。これはチャンスである。こういうときにうまく指導しないと、こういうタイプの子はなかなか意識が変わらない。

案の定先生はものすごく怒った。それはそれはすごい勢いの陝西話で(だから聞き取れないところが多いんだけど)なんで2回も失敗するんだ、失敗しないようにしようと思ってるのか、試合ならどうするんだと罵倒しまくり。そしてもう1回やらされたんだけど、またまた失敗した。

先生は吐き捨てるようにもういい、次をやれと言った。その子はちょっといつもと顔つきが違っている。最後のところに来て少し難しい跳躍動作3)側空翻転体360度の着地を失敗しておしりから落ちた。これまで彼のこんな大きな失敗は見たことがない。もう先生は何も言わない。彼は最後までやってコートを下りたが、目に涙が浮かんでいた。

おえつをはずんでいる息でごまかしている彼に、友達がポケットから出したくしゃくしゃのティッシュを渡したが、彼は受け取らなかった。泣いてなんかいないと言いたいんだろう。涙はきらきら光っていたが、彼は決してぬぐおうとしなかった。

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1 武術関係者のために。半套4つです
2 前掃腿360度からそのままジャンプして360度転身して単蝶歩で着地する
3 側空翻転体360度

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