修理屋のおじさん

語学練習用の小さいテレコを日本でずっと使っていたが、調子が悪くなってMDを買った。それからは頭出しが便利なのでMDばかりになってしまったのだが、中国ではまだテープがメインだ。こちらに来るにあたって新しいのを買おうかと思ったが、ダメになったら買えばいいやと思い、調子の悪いのをだましだまし使っていた。

ところが、昨日再生速度を変えるところをちょっといじったら、早いまんまになってしまい、それから再生ボタンを押しても10秒くらいで止まってしまうようになり、そしてとうとう動かなくなった。

予想の範囲内だったので、新しいのを買うつもりだったが、校内に時計やテレコなどの修理をしているおじさんがいるのを思い出して持っていってみた。

「これ動かなくなっちゃったんだけど」といって見せると、おじさんは「ここには動かないのしか来ないなあ」と言う。横で待っているらしい女の子とおじさんが笑っている。おもしろいおじさんらしい。

「押しても動かないのと、速さを変えるところがダメになったの」と言ったら「押しても動かない。速さを変えるところがダメになった」といちいち復唱しながらえんぴつでテレコ本体にメモっている。

テレコの表示が日本語なので「日本で買ったやつなの。書いてあるのが日本語だけど」というと「日本語? 日本で買った? あんた、どこの人?」というので「日本人だよ」というと「へええー」と驚かれてしまった。日本人はあまり来ないのかもしれない。

「直る?」と聞いたら、「午後に来てごらん」というのだが、すでに2時半だ。「今日の午後? 何時くらい?」と聞いてみると、「6時かな。7時でもいいよ。明るければね」というので、思わず笑ってしまう。「じゃあよろしく」といって帰った。

6時すぎ、夕飯の調達ついでにおじさんのところに行ってみる。「直った?」と聞くと「直ったよ!」と言って、適当なテープを出して「試してごらん」というので、あれこれいじってみたが、完全に直っている。

「よかったあ。思い切って新しいのを買おうかと思ったの」と言ったら、間髪入れずに「買わなくていい。調子が悪ければまた持っておいで」とおじさんは言った。それまでの半分冗談っぽい言い方とは全然違っていた。

部品代含めて40元。

細かいのがなくて100元出すと「おつりに50元札をあげようと思ったけど細かいのしかないなあ」と言うので「いいよ、どっちもお金だもん」というと、おじさんは「その通り、どっちもお金だ」とまた冗談っぽく言いながらおつりをくれた。

Digiprove sealCopyright secured by Digiprove © 2020

コメント

タイトルとURLをコピーしました