ツール

先日読んだある文章。研究のために来た留学生が、教授に「まだ下手だから日本語の授業を受けたい」と申し出てダメだと言われたとのこと。教授いわく「語学はツールだからお金で買えるが、研究はお金では買えない。今の日本語で十分だ」。

日本語力を上げるほうが後々研究に役立つという考え方もできそうですが、研究に来たのなら研究しろと、この教授は徹底していてすがすがしいです。

こちらはその語学を買っていただく身、これくらいすがすがしく徹底した態度で勉強して実力を上げ、高くお買い上げいただかなければなりません。

でもプロにも「お金で買える実力」と言われるものがあり、それは辞書です。この言葉を聞いてから、できるだけ辞書類はケチらずに買っていましたが、どちらかというと中日辞典、中中辞典を意識して、日本語の辞書はあまり充実していなかった気がします。最近は翻訳の力を上げるために、日本語の辞書をもう少し買い揃えようと思っていました。

そんな時、出張先で時間をつぶすために入ったBOOK OFFでこれを見つけました。

新品同様、元の値段の1/3。出張の重い荷物を持っていましたが、迷わず買いました。

中国語の量詞の豊富さにはいつも驚かされます。訳のときにもそれにふさわしい数え方をすべきですよね。…というより、まずは正しい数え方をしなければ。船の数え方(隻、艘、艇)の使い分けとか、きちんと理解しておかないといつかやらかしてしまいそう。

強い味方を手に入れました。

ラッキー

かなり正式な歓迎パーティの仕事。とはいえ正式なあいさつは正式な通訳がやり、私は2人のテーブルスピーチの担当でした。

エージェントにも、主催者にも、原稿は出ないと言われていたし、これまでもフランクなテーブルスピーチで原稿が出たためしはないのであきらめていました。正式な通訳はちゃんと訳さなきゃダメですが、言うことはだいたい決まっています。でもテーブルスピーチはどんな話題が出るか、わかりません。スピーカーの経歴だけはチェックして、あとはぶっつけ本番でやるしかありません。

会場でスタンバイしていると、スピーカーの1人が早めにいらっしゃいました。「通訳を担当します」とごあいさつをし、ついでにダメ元で「どんな話をされるか、もし決めていらっしゃったら教えていただけると助かります」と言うと、「ああそうか。話すこと、メモしてあるんだよね。コピーしてくればよかったなあ」。

欣喜雀躍。会場のスタッフを呼び、コピーをお願いして、本番までの短い間に目を通すことができました。

スピーチは予想どおり、少しユーモアをまじえたもので、途中、私の訳で中国側のお客様がどっと笑ったときには思わず「やった!」と思いました。これも、スピーチメモ(というより、ほぼ原稿だった)をいただけたおかげです。あきらめずに聞いてみてよかった。

もう1人は原稿なし。こちらもユーモアたっぷりのたのしいスピーチでした。実は、今回の中国側のお客様は先日の仕事のお客様と同じ省の方で、先日「うちの省ではこういうんだよ」とあるものの名前を教えてもらっていました。なんと、このスピーチにそれが出てきたのです!

日本側がスピーチでわざわざ話題にするのですから、現地では有名なものに違いない。それはごく普通の単語で、普通話で何と言うかはわかっていたのですが、その教えてもらった言い方で訳しました。中国側のお客様、大喜びで拍手(拍手は通訳にではなく、スピーチの内容に対して、ですけど)。こちらも「やった!」と思いました。

ラッキーが2つも重なり、帰路についても少し興奮していました。それにしても、通訳は貪欲に情報を集めて自分のものにしなければいけないと、改めて痛感しました。