夕食会の通訳

ある業界団体の夕食会の通訳を頼まれました。1テーブル3人につき通訳1人というものすごくぜいたくな配置のうえ、司会とあいさつの通訳は団づきの方がやってくれるという、たいへんありがたいお仕事。

食事会の場合、通訳も食べていいのか?というのが問題なんですが、今回のエージェントは「食事は勧められても断ってください」という方針です。それはそれで別にかまわないのですが、中国人は同席している人がどんな立場であれ、食事をいっさい口にしないというのはどうもキモチワルイと思う人たちなので、断り方が難しいですよねぇ。怒らせちゃったら元も子もないし。

もう1つ、食事会の場合、どんな話題が出るのかまったくわからないというのも問題。私の席は中国側の一番の海量と日本側の一番の海量が揃ってしまい、最初から最後まで、乾杯!!とお酒の種類についての話で終わりました。これはこれで盛り上げるためにテンション上げっぱなしというつらさはあって、日本側の幹事さんに「たいへんな席に当たっちゃいましたね」と同情されてしまいましたが、別の席ではなぜか各国の発電の話になっちゃって「フランスで使っているタービンの場合……」なんていう会話が延々続いていたそうな。その席の通訳さん、「宴会はこれだからイヤよね~」とぐったりした様子でした。

でも楽しい会だったし(仕事がラクだったからではない)、やっぱ現場はいいなあと思いました。ヒマはいいんですけど、たまには仕事しないとね。

たまには映画

また土日に東京へ行っていました。先週も東京だったけど、ずっと缶詰めでストレスたまっていたし、今回は土曜日の早い時間に目的の用事が終わったので、残りの時間は(1)フロンターレ vs レイソル (2)『海洋天堂』 (3)『サンザシの樹の下で』の豪華3本立てで行くことにしたんですが、(3)の映画館は人山人海でチケットは完売。次の回だと帰りの飛行機に間に合わないので、しかたなくあきらめました。ま、いいか。もしかしたら札幌にも来るかもしれないし。どっちか来るなら、『サンザシ~』の方が可能性が高そう。それに、来月上海に行くので、何かほかにも方法があるでしょう(具体的に書くのはちょっとはばかられる方法だったりして)。

公式ホームページ

ところで『海洋天堂』。客席のあちこちですすり泣きの声が聞こえてました。私は、あ~中国映画お得意の落としどころだなあって思っちゃうところがあって、すすり泣きまでに至らず、鼻が酸っぱくなる程度でした。って、結局やられてるんじゃん。

李连杰(ジェット・リーと言わないところに武術関係者としての妙なプライド)は、アクションよりこういう役のほうが合ってるような気がしてましたが、やっぱりねって感じです。これからどんな俳優さんになっていくのかなあ。それにしても、老けましたね…。息子の役をやっていた文章がピュアな感じでよかったです。実は彼が泳いでいるシーンでなんだか鼻が酸っぱく。

しかし、2日間猛暑の東京を歩き回って、ややふらふらしつつ帰宅。あげくの果てになでしこジャパンだし、今日は早く寝ます。

わな

週に1度、2人の方に中国語レッスンをしています。今週は「歇后语」のことがちらっと出たので、説明のために私が一番好きなやつ“剃头挑子—一头热”を例に出したんですが、2人とも目をきらきら輝かせてノートを取って「おもしろい~」と大喜び。

おもしろいでしょ、とこっちも楽しくなっていたら、1人が「でも、こういうのを勉強し出したら、かんじんの中国語が進まなそう…」と。うーん、鋭い、そうなんです。

中国語を勉強していると、道の途中に成语とか、谚语とか、歇后语とか、尺牍とか、相声とか、いろんな楽しそうなわながしかけられてるんですよね。もちろんどれも勉強しなきゃいけないことなので、どれどれとひっかかると、あっという間にはまって抜け出せなくなってしまいそうです。

私は尺牍がとにかく超~~かっこいいと思っていて、わなにかかりたいんだけど、よくよく冷静になって考えると、中国語が相当のレベルに達していてなおかつ尺牍がすらすらというのがかっこいいのであって、大した中国語力でもないのに尺牍だけ語っちゃってるのはどうなんでしょう。

ほかの言語にもこういうわなってあるだろうと思うんですが、なんだか中国語は多すぎませんか? そして、危険すぎませんか? はまったら楽しいことがわかっているし、少しははまらないといけないのに、完全にハマルと本筋からころがり落ちるかもしれない。どうすりゃいいの。

中国語教育

あるブログで中国語教育について、熱い論争が繰り広げられています。私はその世界の専門家ではないので、つっこんだ議論はできないのですが、中国語教育界(中国語学習界といっていいのか)がいびつだなという気はします。

私のようなレベルでも通訳業界の情報というのはそれなりに入って来ます。通訳になろうという人が最初のターゲットにし、業界への入口にするのが通訳案内士だと思いますが、私の住む北海道は近年アジアからの旅行者が激増し、通訳案内士がまったく足りていません。どこにでもある話で、無資格者の違法ガイドが「横行」しているわけですが、それを取り締まるにも取り締まれない事情があるという話を聞きました。というのは、概算で現在北海道に来る中国語話者の旅行者にすべて有資格ガイドをつけると、北海道に400人のガイドが必要になる、でも今有資格者は70人弱しかいないのだそうです。しかも、その中には資格はとったけど稼働していない人が多数いるので、無資格ガイドや旅行会社を取り締まると、旅行者がほとんど来られなくなってしまうというのです。

そうすると、「旅行者が落とすお金めあてで無資格ガイドを見て見ぬふりするのか」という議論も出ますが、関係者は「ガイドを育成できない中国語教育界のしわ寄せがなぜこっちに来るんだ」と言いたいでしょう。

通訳を使う側にも危機感はあって、さまざまな試みがなされているようですが、ガイドや通訳を育成しようにも、一定以上の語学力をもった学習者が語学学校に通訳クラスが成立するほどいないのです。いつまでも人材が供給されないから、市場は留学生バイトを使わざるをえない、市場が中国人留学生で占拠されているので、日本人は苦労して通訳になろうとは思わない…悪循環です。

通訳育成のために中国語学習があるわけではありませんが、通訳になる人は中国語学習界を通ってきていて、やっぱりつながっているはずです。両者がうまくリンクしていないことが私が感じるいびつさなのかもしれません。

とはいえ、北海道にこんなに中国語圏からの旅行者が殺到するようになったのもわずか10年のできごとで、教育界と通訳業界がうまくリンクしていたとしても、急激な需要の増加に対応できていたかは疑問です。さらに東日本大地震と原発問題で外国人旅行者が9割減という現状を見ると、もし有資格のプロのガイドが大量にいたとしたらどんなに打撃だったか、使ってたのがバイトでよかったというような皮肉な状況もあります。

英語では英語教育と通訳業界がそれなりにうまくリンクしていると思うのですが、それは日本の英語教育の長い歴史と圧倒的な市場の需要と大量の英語学習者によって実現されているのでしょう。北海道ではロシア語通訳の需要が多いのですが、やはり地域性や歴史的な経緯から、非常に小さい市場ながら、学習者と通訳業界とのリンクがうまくできているように思えます(他人の芝生は…かもしれませんが)。ほかの言語の事情をそのまま中国語にあてはめることはやはり難しい。中国語は中国語なりのいい状況を目指していければいいと思います。